事例:埼玉県さいたま市様
流行予測AIを活用し、医療機関を中心としたさまざまなデータを基に、
地域別の感染症の流行予報を提供します。

(写真提供 さいたま市)
全国初となる感染症予報の実証実験を実施。
市公式LINEでインフルエンザ予報を発信し、
市民生活の向上につながる成果を実感。
令和元年度および2年度に、損害保険ジャパン株式会社 (以下、損保ジャパン)、株式会社日立社会情報サービス、株式会社日立製作所(以下、日立製作所)の3社が、埼玉県さいたま市と協創し、流行予測AIを活用した感染症予報の実証実験を行いました。
市民の感染予防に対する意識を高め、行動変容につなげることをねらい、市公式LINEによりインフルエンザ予報を発信しました。その結果、70%以上の利用者から継続的な情報配信を希望されるなど、市民生活の向上につながる成果を実感でき、今後あらゆる感染症に対応することへの期待が高まっています。
2020〜2021年シーズン
令和2年度数字でみる実証実験の結果
- インフルエンザ情報は、“感染者数など過去のデータ”より“これから先の予測”が重要。
従来のページと比較して、予報サービスには5倍以上のアクセス数 - インフルエンザ情報をきっかけに、市公式LINE友だち登録者数54%増
- 予報サービスの継続配信を希望した利用者は、約70%
- 利用者の積極的な予防行動を促し、約80%が行動変容につながると回答
- 予報サービスに関する意見やクレームなどの問い合わせ0件
以下、さいたま市様のインタビュー内容となります。
【実証実験までの経緯】
スマートシティへの発展的な取り組み
さいたま市では、全庁一丸となって、市民満足度90%以上をめざす「さいたまCS90+運動」に取り組んでいます。具体的には、「公」「民」「学」の連携による先進的事業を積極的に推進することで、市民一人ひとりの生活の質を向上させ、人と人が絆でつながる「スマートシティさいたまモデル」の構築を推進しています。
こうした取り組みの一環として、毎年、市民生活に大きな影響を与えるインフルエンザの感染率を下げることは、子育て世代が暮らしやすい環境づくり、ひいては生産年齢人口の増加にもつながるはずだと考えます。
インフルエンザ予報の実証実験は、市と包括連携協定を結んでいる損保ジャパン様と、スマートシティさいたまモデルに関する住民向けサービスの構築・実装に取り組む美園タウンマネジメント協会の会員である日立製作所様が連携して、さいたま市に提案したことがきっかけで開始しました。

【実証のねらい】
短期的に市民に還元できるサービス

未来都市推進部 有山 信之様
現在のコロナ禍において、感染症予防に対する世間の意識は当然高いですが、さいたま市がこの予報サービスに出会ったのは、コロナ流行より前でした。
前例のない取り組みでしたので、初期段階で、それなりに苦労もありました。例えばサービスに関わる複数部署との調整に加え、地元医師会への相談なども必須となります。しかし、新しいことを始めるためには必要なことですし、インフルエンザの感染率を下げ、市民生活の質の向上に貢献するための実証ですから、この事業の意義と市民への還元・寄与について丁寧な説明を重ねました。これにより、十分理解してもらうことができ、庁内の連携・協力体制を確立することができました。
【具体的な取り組み内容】
官民連携で日々改善し、アクセス数が大幅アップ
インフルエンザ予報の実証実験は、令和元年度と令和2年度の2回実施しました。市から市内の流行予報を周知することで、市民の感染予防に対する意識を高め、行動変容につなげることをねらいとしています。
令和元年度は市内全域を一つのエリアとして予報を提供していましたが、令和2年度では市域を南北に2分割し、地域を細分化することによって、予報をより身近に感じられるように工夫しました。
また市民への周知方法については、ポスターやチラシなどアナログな手段でのPRが中心だった1回目に対し、2回目は広報課と連携して、市報や公式LINE・TwitterでのPRを行いました。特にさいたま市公式LINEのお友だち登録者の数は約54%増加し、アクセス数も約10倍に伸び、デジタルも活用したPRは、非常に手ごたえを感じられるものになりました。
一方、Webページの見やすさ・使いやすさも改良を重ね、利用者に伝わりやすいものになるよう、継続的に改善しました。さらに令和2年度は新型コロナウィルス感染症対策の影響もあり、インフルエンザの流行がかなり抑えられたという状況でしたが、情報としての面白さを意識し、継続して興味・関心を持っていただけるよう、日本ヘルスケア協会とも連携し、インフルエンザをはじめとする感染症に関する参考情報・アドバイスも加えて配信しました。
【今後の展望】
あらゆる感染症への期待、
実装へ向けて準備を整えていきたい
新型コロナウィルスの感染拡大が続くなか、今や感染症は重要な社会課題の一つです。ぜひ感染症予報サービスがあらゆる感染症に対応いただけるよう心から期待しています。
全国で初めての試みをさいたま市から始められたのは、大変ありがたいことです。この取り組みが全国に広がっていくことで、市民にとっても自分たちの市から始まったという誇りにつながるのではないかと考えています。また今後は本サービスの実装へ向けて、関係者と調整していきたいとも考えています。
引き続き、さいたま市は、AIやIoTといった最先端の技術や知見を活用しつつ、「安全・安心」、「快適・便利」、「楽しく・豊か」、そして、コミュニティが育まれる「スマートシティさいたまモデル」の構築に取り組んでいきます。
[令和3年5月取材]
【成果】
数字でみる実証実験の結果
- インフルエンザ情報は、“感染者数など過去のデータ”より“これから先の予測”が重要。
従来のページと比較して、予報サービスは5倍以上のアクセス数 - インフルエンザ情報をきっかけに、市公式LINE友だち登録者数54%増
- 予報サービスの継続配信を希望した利用者は、約70%

さいたま市ホームページには従来からインフルエンザ関連情報が掲載されているが、今回の実証実験により、従来のページと比較して、予報サービスには5倍以上のアクセス数があった。感染者数など過去のデータより、これから先の予測を重視していることがよくわかる。
(令和2年11月27日〜令和3年2月12日 アクセス解析データより)

予報サービスの配信開始以降、さいたま市の公式LINE友だちの登録者数は、2週間で2,000名増加。最終的には54%増となり、いかに利用者がこれから先の予測に興味・関心があることがよくわかる。
(令和2年11月27日〜令和3年3月26日 アクセス解析データより)
アンケートの結果、行動変容につながった利用者は約80%、継続配信を希望した利用者は約70%となり、サービスを利用した市民の行動として、予防接種・外出自粛を意識するようになった人が増えている。継続的な情報配信を希望する割合も高い結果に。
(さいたま市民3,000人に調査(令和3年4月))
主な継続配信希望の声
- インフルエンザに罹患したくないから、しっかりとした感染予防をしたい。(男性10代)
- 予報が配信されることで、注意喚起につながると思うから。(女性40代)
- コロナ渦中もあり、予防に気をつける意味でも配信してほしい。(男性40代)
- どの地域でどのくらい流行っているのかを知りたいから。(女性40代)
- 手軽に周辺の流行状況がわかり助かるので。(女性30代)
- 自分の近くでインフルエンザが流行っているか、危機が迫っているか、具体的にわかるから。(男性40代)
- 予防に役立つから。(男性50代)
- 便利だから。(男性20代)
- 情報として知っておきたいから。(女性50代)
- 情報は必要。(男性60代)
- 状況を把握しておきたいから。(男性50代)
- 子どもが保育園に行き始めたので今後は情報を入手したい。(女性30代)
- 受験を控えた子どもがいるので。(女性40代)
- 持病もあるので気になるから。(男性50代)
- コロナの流行とインフルエンザの流行の関係性がよくわからないけれど、もし、両方のウイルスがパンデミックを起こした場合などの情報がほしいから。(女性40代)
お客さまメモ
埼玉県さいたま市
- 概要 :平成13年5月に浦和市・大宮市・与野市の3市が合併して誕生。埼玉県の県庁所在地で、平成15年4月には全国で13番目の政令指定都市に移行し、平成17年には岩槻市を編入した。令和3年5月に誕生20周年を迎えた。新幹線6路線を始め、JR各線や私鉄線が結節する東日本の交通の要衝となっており、関東圏域を牽引する中核都市として、さらなる発展をめざしている。
- 人口 :1,330,286人(令和3年7月1日現在)
- 世帯数:620,409世帯(令和3年7月1日現在)
- 面積 :217.43㎦ https://www.city.saitama.jp/
本事例は行政専門誌に掲載されています
ジチタイワークスVol.14 埼玉県さいたま市
「市民に求められる“感染症予報”で安心・安全な都市の実現へ」
本サービスを活用した「感染症は予報をもとに予防していく」
という新しいライフスタイルの確立により
社会課題・自治体課題の解決に取り組みます。
※文章の一部は、「ジチタイワークスvol.14」より引用しています。
サービスの拡張とともに、業界を超えた多様なパートナーとの協創事業を通じて、
人々の安全・安心・快適な生活のための情報インフラをめざします。